歯牙移植について
歯牙移植とは?
通常、歯を失った場合は、ブリッジや部分入れ歯、インプラントといった人工物で補うことが一般的です。一方、歯牙移植は失ってしまった歯(あるいは、これから抜歯予定の歯)の場所に自分の歯を移植します。歯茎から上に出ている部分の歯は手術後に被せ物となりますが、歯の根は自分の歯です。移植する歯(ドナー歯)は、機能を果たしていない親知らずや埋伏歯(まいふくし)がよく使われます。
自分の歯を移植するので拒絶反応が起きないこと、噛み心地が良いことがメリットです。しかし、予後が不安定でドナー歯の寿命が5~10年とずっと使えるものではないことがデメリットです。
治療の流れ
検査
CT撮影をします。ドナー歯の歯の根の形や大きさ・周囲の神経の位置、移植場所の骨の状態を3次元的に確認します。
手術
抜歯予定の歯を抜いた後、ドナー歯を抜歯し移植場所に移植します。ドナー歯が生着するまでの間、接着剤やワイヤーで固定しておきます(約6週間)。
神経の治療
手術から4週間程経過してから神経の治療を行います。ドナー歯の中にある神経は死んでしまうため取る必要があります。
被せ物の治療
ドナー歯が完全に固定されたのを確認してから、被せ物をつくり装着します。
インプラント治療との違い
インプラントとの大きな違いは、歯の根に“歯根膜がある”ことです。インプラントは人工物なので歯根膜はありません。
歯根膜とは歯の根と骨の間にある薄い膜のことで、再生能力があることが大きなポイントです。ドナー歯が持っている歯根膜が移植先で骨組織や歯周組織を再生させることによって歯の根がしっかりと固定されます。歯の土台である根っこがしっかりと固定されることによって、今までと変わらない噛み心地が実現できるのです。
適応となる方
- 健康なドナー歯を持っている方の中で、これから抜歯予定の人・すでに歯を失っている人
- 40歳前後までの方(高齢になるほどドナー歯の生着率が悪くなってしまうため)
移植の条件
- 健康なドナー歯を持っていること
- ドナー歯の歯の根の形が複雑でないこと
- ドナー歯と移植先の歯のサイズが合っていること